• 2017_05
  • <<
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • >>
  • 2017_07

必殺川の字切り

このブログはRiverがCardWirthのリプレイをしていくつもりが、脱線していった成れの果てです。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. [ edit ]
  2. スポンサー広告

初めての方に(この記事は常に先頭に表示されます)

このブログはgroupASK様のフリーゲーム「CardWirth」関連をいろいろしていくサイトです。

「CardWirth」ってなに?という方は[groupAsk offcial fansite]にどうぞ。

このブログにリンクしたいという酔狂な方はご自由にどうぞ。ただし、アダルトサイト違法サイトの方はご遠慮ください。



 ちなみに・・・

 River製の駄シナリオに関してはすべてオフィシャルファンサイトのギルドへ投稿してあります。このページからはDLできないので上記のリンクからどうぞ!(2012/06/09追記)

 リンクのシナリオ置き場からDLできるようになりました(2013/10/13追記)

 カードワースリプレイ始めました(2016/03/26追記)

カードワースシナリオリプレイ

注意:
・オリジナル要素あり
・ネタバレあり(読む前に原作シナリオをプレイ推奨)

 この小説はgroupAsk様のカードワースのリプレイです。カードワースの著作権はgroupAsk様にあります。また、小説内で使われる単語や内容はそれぞれ原作シナリオ作者様(各記事の下欄参照)に著作権があります。不備があればご報告いただけるとありがたいです。それ以外に関してはRiverに著作権があります。(いないでしょうが)無断転載はやめてください。

クロスオーバーは上等だ、かかってきやがれ。


目次
 ・パーティ結成編
  ・(2016/03/26)PC1・2:タントとクラリス
  ・(2016/03/27)PC3:ホーク
  ・(2016/03/28)PC4:ユーフェ
  ・(2016/03/28)PC5:シルバ
  ・(2016/04/02)PC6:プリムラ
  ・(2016/04/03)パーティ結成

  ・(2016/06/18)忙しい人のための「簡易キャラ紹介」

 ・駆け出し冒険者編
  ・(2016/04/10)第一話『ゴブリンの洞窟』
  ・(2016/08/09)第二話『感情の芸術家』
  1. [ edit ]
  2. 諸注意
  3. / トラックバック:0
  4. / コメント:0
スポンサーサイト

感情の芸術家

 リューンから徒歩で二日ほど離れた場所にある山間の村。
 名を『ライトネル村』という。
 人口は百人にも満たない小さな村だ。

 村の中には宿屋が一つしかなく、たまに訪れる旅人たちはその宿に泊まるのが常だった。
 駆け出しの冒険者パーティである『烈火と成る者たち』一行も、その『雪上の轍亭』という名の宿に宿泊していた。

 時刻は日暮れ前。
 タントたちは夕食を終え、他に客もいない食堂で夜が更けるまでの時間を思い思いに過ごしていた。

「今日も一日、雨だったな……」

 窓の外を占める曇天を眺めながら呟いたのは『烈火と成る者たち』の盗賊であるシルバだった。
 見上げた空は分厚い雲に覆われて、ザーザー降りの雨音が耳朶に触れる。
 シルバは小さな溜息を吐いた。

「――外はまだ雨風が強いようだねぇ」

 シルバの独り言に返事を返したのは『雪上の轍亭』の女将だった。

「この分じゃ明日も足止めかもしれないね。
 あたしとしちゃ、お客さんらがいつまでもいてくれた方が嬉しいけど」

 宿の女将は夕食の後片付けをしながら『烈火と成る者たち』へ話しかけた。
 この村での四度目の夕食を終えた一行は宿の食堂で暇な時間を過ごしていた。

「女将さんはそれでいいかもしれないけどさー。
 正直参っちゃうよ。依頼のためにここまで来たのに、このままじゃ報酬が宿代で消えちゃいそうだ」

 テーブルに突っ伏していた少年――ホークが愚痴をこぼした。
 『烈火と成る者たち』がライトネル村への物資配達という依頼を受けたのが五日前。
 そしてその依頼を終えたのが三日前のことだった。

 物資の配達は道中何事もなく予定よりも早く終わった。
 だがその後、余った時間で観光をしていこうと思ったのが運の尽きだった。
 日程がずれたせいで長雨にぶつかってしまい、『烈火と成る者たち』はライトネル村で思わぬ足止めを食らっていた。

 おかげでここ二日間は宿にこもりきりの生活を強いられていた。
 幼いながら生粋の冒険者であるホークにとって、閉じこもって何もしない時間というのは苦痛だった。

「明日からはこの村で何か仕事を探したほうがいいかもしれないわね。
 女将さん、農作業の手伝いとかないですか?」

 ホークよりも真剣に宿代の心配をしていたのはクラリスだった。
 その真面目な気質からこのたびパーティの財布を預けられることになった彼女。
 物資の配達で得られた報酬をリューンに帰る前に使い切ってしまう、という事態はどうにか避けたいようだった。

「んー、あたしの知る限りではないと思うけど……。
 明日村長のところにでも聞きに言ってみたらどうだい?」

 『烈火と成る者たち』の一行は、村での生活に完全に飽き切っていた。

 観光地と言えば村の近くの湖と古城のみ。
 しかしそれらは村に来た初日に探索し終わっていた。
 料理自慢の女将の出す食事だけが唯一残った楽しみだったが、三日目ともなれば新鮮味も薄い。
 そして今日も何事もなく、ただ明日の天気が晴れることのみを祈るだけで過ぎ去ろうとしていた。

 ――トントン。

 しかしその退屈に、突然のノックの音が終止符を打った。

「誰かきたみたいッスよ!」

 半分寝ていたプリムラが猫のように跳ね起きて音のした方へ目を向ける。
 宿の玄関口が開き、一人の男が宿の中へ入ってきた。

 身なりの良い男だった。
 容姿も整っており、まるでどこかの騎士か貴族のようだった。
 しかし傘はおろか外套も持っていないようで、ブロンドの髪からは水が滴っていた。

「いらっしゃい、泊まりかい?」

 女将が声を掛ける。
 しかし男は息を切らすばかりで返答できない。
 やっとのことで「水を……」とだけ呟いた。
 どうやら雨の中を走ってきたようだった。

「あいよ。ちょっと待ってな」

 女将が男に水を渡す。
 男は震える手で水の注がれたコップを受けとった。
 『烈火と成る者たち』はその様を遠巻きに見る。

 雨に降られたせいか、男はかなり血色が悪い。
 コップに注がれた水もどうにか飲み込んでいると言った様子だ。
 その様は、飲んでいる、というよりはこみあげてくるものを抑え込んでいるかのように見えた。

「……ふぅ」

 時間をかけて、男はようやくコップ一杯の水を飲み切った。

「一息ついたかい?」

「……ええ、ありがとうございました」

 ようやく息も整ったようで、身なりの良いその男は丁寧に礼を言った。

「で、何だってこんな時間にうちにきたんだい?」

 改めて、女将が男に尋ねる。

「ここに、冒険者の方がいらっしゃっていると聞いてきたのですが……」

 『烈火と成る者たち』の面々は顔を見合わせる。

「そいつは多分、俺達のことだぜ。
 なんだ、俺達に依頼でもあんのか?」

 タントが男に尋ねる。

「貴方たちが冒険者の方でしたか。
 ええ、是非急ぎで依頼をお願いしたいのです。

 ――私の、護衛を」

 男は真剣なまなざしで語りだした。

 男の名はジャックというらしい。
 絵描きだというジャック。
 その依頼は「絵を描く間に自分の身を守ってほしい」ということだった。

 ジャックが描きたいというのは『烈火と成る者たち』が探索した湖の古城だった。
 その城――シルバリーア城を描くのに最も適したスポット。
 それがロベット山の山中にあるらしい。

「ロベット山だって?
 でもあんた、あそこは確か……」

「ええ、グリズリーの住処になっています。
 だからこそ、冒険者であるみなさんに護衛をお願いしたいのです」

「なんでわざわざそんなところで絵を描くんですか?
 他の場所からでもあの城は見えるじゃないですか」

 グリズリーと聞いて露骨に嫌そうな顔をするユーフェ。
 冒険者になり以前よりはずっと活動的になった彼女だったが、危険なこと・疲れることを嫌うインドア・シスターにとって獣のいる山に入るというのはかなりのハードルだった。
 そんなユーフェの気持ちも理解しているクラリスは苦笑いしながらその頭を撫でた。

「あの場所でないと……あの場所でないと駄目なのです……。
 危険なのは百も承知ですが、お願いします!

 報酬もちゃんと用意してあります。
 前金で銀貨二〇〇枚、絵が完成すればさらに四〇〇枚をお支払いします。
 受けてもらえませんでしょうか……?」

 ジャックは深々と頭を下げる。

 その様子を見て『烈火と成る者たち』は再び顔を見合わせる。

 グリズリーは油断できない相手だ。
 その巨体に見合う膂力と、牙や爪と言った生来の武装。
 成獣となったグリズリーは一流の戦士に及ぶ。

 決して『烈火と成る者たち』の勝てない相手ではない。
 しかし、相応の準備もせずに挑むには危険な相手であることもまた事実だった。

「――あんたら、受けておやりよ」

「女将さん」

 冒険者たちの逡巡を断ったのは、宿の女将の一言だった。

「あたしには絵描きのことは分からんがね、その兄ちゃんが本気だってことは伝わってくるよ。
 本気の気持ちってのは、応援したくなるってのが人の情さ。
 報酬が足りないってんなら、あんたらの宿代を安くしたって構わないよ」

 女将の提案は『烈火と成る者たち』にとって十分に魅力的だった。

「俺は受けてもいいと思うぜ」

 タントは窓の外を顎で指す。

 雨が止んでいた。

 三日も続いていたはずの雨だったが、まるでタイミングを計ったかのように止んでいた。

「また何日も続く依頼だってんなら話は別だが、今回のはそうじゃねえだろ?
 どのみち予定は大きく遅れてんだ。
 今更多少延びたところで問題はねえよ。
 せいぜい親父のハゲが進むくらいだ」

「いや、親父さんにこれ以上心配かけちゃうのはよくないと思うけど……。

 でもそうね、それ以上に女将さんには世話になったしね。
 この依頼、私たちが受けましょ」

 クラリスの決断に対し異論は挙がらなかった。
 『烈火と成る者たち』は濡れ鼠の絵描きの依頼を受けることとなった。





 依頼人である絵描きのジャックは、すぐに寝入ってしまった。
 雨の中、急いで宿まで来たことによる疲労に加えて、依頼を受けてもらえた安心感もあったのだろう。

 一方で冒険者一行は、日が暮れる前に明日の準備をすることにした。

 この時期は山の動物たちの活動期だ。
 ユーフェは回復の術を持っているが、逆に言えば彼女が倒れれば『烈火と成る者たち』に回復の手段はない。
 万が一のために傷薬を買っておきたい、というのがホークの意見だった。

 加えて、山へ入るなら情報収集も必要である。
 『ライトネル村』と同じく山間の村の出身であるクラリスは、不慣れな山に入ることの危険を熟知していた。
 どんな動物がいるか、地形はどうか、猛獣たちの住処や餌場、行動範囲、活動時間など。
 その地域に住む人々にしか知らない情報が、旅人の命を左右することは珍しくない。

 話を聞いた女将さんから勧められたのは、村に唯一ある雑貨屋だった。

 雑貨屋の娘はタント達の顔見知りだった。
 というのも、彼らが最初に受けた物品配達の配達先こそが件の雑貨屋だったからだ。
 事情を話した冒険者一行に、雑貨屋の娘は気前よく傷薬と葡萄酒を渡した。
 曰く、「依頼のお礼と応援の気持ち」だそうだ。

 「この村の人たちはみんな優しいのね」と言ったクラリスの言葉に、雑貨屋の娘は満面の笑みで返した。

 そして翌朝。

 連日の雨が嘘だったかのように空は快晴。
 木々の間から漏れた日差しが、クラリスのオレンジ色の髪に反射して弾けていた。
 地面は多少ぬかるんではいたが、山登りに支障はなさそうだった。

 シルバは山頂を見上げる。

 麓から見たロベット山は鬱蒼とした木々に覆われていた。
 鳥の声は高く響き、どこからか獣の気配が流れる。
 山は人間を拒むかのようにむっつりと佇んでいた。

「――それでは、みなさん。
 よろしくお願いします」

 画材を背負ったジャックが、また深々と頭を下げる。
 目指すはロベット山中腹にあるジャックの言う「絵描きスポット」である。

「随分重そうな荷物ですね」

 ユーフェがジャックを見る。
 昨日の晩ほど顔色は悪くなさそうな依頼人。
 しかしその細身の体に対して、大きな荷物はかなりの負担に見えた。

「手伝ってやろうか?
 あんた、見たところ体力あるタイプじゃねえだろ。
 目的地までは結構歩くみたいだぜ?」

「お気持ちだけもらっておきましょう。
 これは私の商売道具、いわば体の一部のようなものです。
 それに冒険者さんたちに頼んだのは荷物持ちではなく私の護衛ですからね」

 タントの歯に衣着せぬ物言いにも、ジャックは柔らかな笑みを浮かべて答えた。

「それならば、こちらはこちらの仕事に集中させてもらおう」

 シルバが隊列の先頭へ移動した。
 ジャックを中心にシルバ、タント、ホークが三角形を形作る。
 どの方向から襲撃されても対応できる、護衛陣形の基本形だ。

 一行は一塊になって山道を登っていく。
 木々は鬱蒼とし道は広くはなかったが、傾斜はなだらかだった。
 早朝の、それも山の上ということもあり気温もそれほど高くない。
 冒険の出だしとしては順調だった。

 グリズリーが出るという話から、登り始めこそ緊張していた一行。
 しかし件のロベット山は予想よりもずっと穏やかだった。

「出ないッスねー、グリズリー。
 てっきり山に入った瞬間、斬った・張った・のこったの怒涛の展開になるかと思ってたッスけど」

 妙な言い回しの感想を述べながら、プリムラが肩をぐるりと回す。
 山に入った直後は辺りを警戒していっぱい弓を握りしめていた彼女だったが、切り替えの早さは『烈火と成る者たち』の中でも随一だった。

「何を言ってるんですかプリムラさん。
 グリズリーに限らず、野生動物というのは基本的には臆病なものです。
 むしろ人が近づいて来たら向こうから避けるくらいですよ」

「へー、意外ッスね!
 じゃあじゃあ、このままおしゃべりしながら歩いてれば襲われないってことッスか?」

 大きな声を出すプリムラを見てホークは思わず苦笑いした。

「残念だけど、そんなに単純には行かないよ。
 野生っていうのは、型にはまらないからこそ野生なんだ。
 あんまり驚かせちゃうと、逆にパニックになって襲い掛かってくるかもよ?」

 ホークが担いだ槍で肩を叩きながらプリムラの甘さを両断する。
 それを聞いたプリムラはぶるりと震えて弓を握りなおした。

「ふふっ」

 プリムラの様子を見て、ジャックが笑みをこぼす。

「すみませんジャックさん。どうにも緊張感がなくて……。
 でもああ見えて、プリムラちゃんは弓の名人なんですよ」

 不安にさせたのではないかと思いクラリスはジャックに謝罪した。

「ああ、こちらこそすみません。
 人の話を傍で聞いていて笑ってしまうなんて、礼を欠いた行為でしたね。

 ですがみなさん、楽しそうだなぁと思って」

「楽しそう、ですか?」

 クラリスは首をかしげる。
 彼女からしてみれば、プリムラがホークやユーフェにたしなめられるのはいつもの光景だったからだ。

「ええ、とても。

 私には同年代の友人がいませんでしたから。
 仲間と一緒に冒険をして、自分たちの力で生きていくという冒険者の生き方には少しだけ憧れがあったんです。

 ……ああ、もちろんそんなに甘い世界ではないということは重々承知しています。
 私のような絵を描くしかできない人間ができるはずもないですよね」

「――んなことねえよ。
 やってみりゃいいじゃねえか、冒険者」

 話を聞いていたタントが横から口を挟む。

「憧れ、なんて言葉は諦めと同義だろ。
 そもそも人間ってのはみんな、自分の力で生きているもんだ。
 冒険者に限らずな。
 だとすれば、俺たちできてあんたにできねえ道理はねえだろ。

 それに、あんた絵描きなんだろ?
 見たことないもんを見に行ける冒険者は、案外絵描きとの相性はいいかもしれねえぜ?」

 本気か冗談か判別できないタントの言葉に、ジャックは目を丸くした。

「……ふっ……ははは!
 私が冒険者ですか?それも、いいかもしれませんね!

 では、もし私がその気になったら、先輩としてタントさんがご指導していただけますか?」

「ハンッ、そいつはお断りだ。
 俺はな、俺を助けてくれるやつしか助けねえ主義なんだ。
 俺を頼りたけりゃ、俺に頼られるくらいの男になるんだな。

 そうだな……、まずはその細っちい体をなんとかしたらいいんじゃねえか?」

「こら、タントくん。
 依頼人の人にそんな失礼な言い方は……」

「ふふっ、大丈夫ですよクラリスさん。
 タントさんの言うことはごもっともです。

 自らの命を簡単に他人に預けない。
 そして、他人の命を預かるときは自らを賭して戦う。

 タントさん、貴方はきっと誠実な人なんですね。
 それでこそ安心して、この身を任せられるというものです」

 皮肉を言ったつもりだったのに、褒め言葉で返された。
 それがなんだか気恥ずかしくて、タントは閉口した。

 「一本取られたね」と笑うクラリス。
 その顔を見るのが悔しくて、タントは肩を竦めて降参を示すように両手を空へ向けた。

 一行はそれからもゆっくりと、しかし着実に足を進めていった。
 グリズリーは現れることなく、途中でジャックが拾いものをした以外には何事もなかった。

 日が上り、徐々に日差しが強くなる。
 ぬかるんでいた地面はもうすっかり乾いていた。
 なだらかな勾配は相変わらずだったが、木々の鬱蒼具合はより濃さを増していた。

 時刻はおおよそ午前十一時。
 麓から歩き初めて二時間ほどが経過していた。

「ふぅ……っ、ふぅ……っ」

「大丈夫ですか、ジャックさん?
 やっぱり誰かに荷物を手伝わせた方がいいんじゃ……?」

「いえ、お気遣いありがとうございますクラリスさん。
 ですが問題ありませんよ。
 これでもむしろ、最近は体調がいい方で……。

 あっ!!」

 ジャックが大きな声を上げた。

 突如様子が変わった依頼人。
 一行は何事かあったのかと注目する。

「あ、あそこです!
 ちょうどあの山毛欅の木を曲がった小道から……!」

「あ、ねえ、ちょっと待って……!」

 駆け出したジャック。
 ホークの静止を振り切り、先頭のシルバを追い抜き、山道を脇道へ逸れてぐんぐん走っていく。

「……とてもさっきまでヘトヘトだった人とは思えないですね」

「あー……、あの勢いじゃ早く追いかけねえとはぐれちまうな。
 ほら、ぼさっとしてねえでさっさと走れよユーフェ」

「タントもだよ!見てないで走ってよ!」 

 のんびりとジャックの背中を眺めながら歩くタントとユーフェ。
 その様子に一喝入れてやりたいホークだったが、今はそれどころじゃなかった。

 果たして、慌てん坊の絵描きの背中にはすぐに追いついた。

 小道に入ってしばらくしたところに開けた空間が存在していた。
 ジャックはそこで、遠くへ視線を向け佇んでいた。

「あっ……」

 最後尾をしぶしぶ歩いてきたユーフェが、その光景を見て思わず声を上げる。

「綺麗……すごく、綺麗」

 そこからは「シルバリーア城」が一望できた。
 まるで湖の上に浮かんでいるかのような古城。
 それは幻想的な美しさと、その城が持つ実存的な歴史の重みが織りなす一個の世界。

 すでに見ていた件の城であったが、確かにその場所からみた風景は格別だった。

「ユーフェさんもそう思われるでしょう?」

「あっ、いや、私は……」

 ジャックがユーフェに微笑みかける。
 無意識のつぶやきを聞かれていたことにユーフェはわずかな恥ずかしさを覚えた。

「私も同じですよ、ユーフェさん。初めて見たときは……いや、何度見てもこの光景に心奪われる。
 ここから見るあの城は、なんていうか、特別なんです」

 ジャックは子供のように目を輝かせる。
 そして何かに突き動かされるようにてきぱきと絵の道具を広げ始めた。
 それは最初に『雪上の轍亭』で会ったときとは別人のようだった。

 夢中になっている依頼人に声をかけるのははばかられた。
 しかしジャックが絵を描いている間、一行はどうしていればいいのかを決めていなかった。

「なあ、ジャック……」

 しびれを切らしたタントは黙々と準備を進めるジャックの背中に声をかけた。

「はい、何でしょう。
 今ちょっと手が離せない状態なのでそのままでお願いできますか?」

 タントに一瞥もくれることなく返事をするジャック。
 その変貌ぶりに、タントは一瞬たじろいだ。
 芸術家という職業は、やはりどこか異質なのかもしれなかった。

「……あんたが絵を描いてる間なんだが。
 特に決めてなかったんだが、俺たちは何をしてりゃいい?」

「そう、ですね……。
 あまり遠くに行かなければ、何をしていてもかまいませんよ。
 適当に暇をつぶしていてください」

「適当に、ですか……」

 クラリスは辺りを見回す。
 当然山奥のその場所に暇をつぶせる様なものなどなかった。





 遠くの山へ、日が落ち行く。
 結局、快晴は一日続き、夕日は辺りを満遍なく朱に染め上げていた。

 ジャックが絵を描いている間、グリズリーや他の野生動物が襲い掛かってくることはなかった。
 そのおかげで『烈火と成る者たち』は余計に暇を持て余すこととなったのだが。

「……よし!」 

 依頼人がようやく筆を手放した。

「出来たッスか?見たいッス!」

 プリムラがキャンバスをのぞき込む。
 見れば真っ白だったキャンバスには、まだ概形だけではあるものの湖に囲まれる古城が雄大に描かれていた。

「まだザックリとした部分だけですけどね。
 ですがここでの作業はこれで終わりです。
 後は持ち帰って、細かい部分を調整していくだけです。

 みなさん、今日はありがとうございました」

「何事もなく終わってよかったね。
 ま、まだ帰りの行程が残ってるけどさ」

「そうですね、帰りもよろしくお願いしま――」

 ジャックが礼を述べながら後片付けを始めようとしたその時。

「キャぁぁあああアアアアアア!!」

「っ!!?」

 遠くから甲高い叫び声が響いた。
 恐らくは子供か女性、それもかなり切迫した状態だろう。

「何ッスか、今の声!?
 なんだかやばそうな感じッスけど……」

「向こうからですッ!
 何かあったに違いありません、助けにいかないと……!」

「そう簡単には終わらねえってか……!!
 しょうがねえ、依頼にゃ含まれてねえが人助けだ。

 ホーク!俺と先行して様子を見に行くぞ!
 他の連中はジャックを守りながらついてこい!」

「あ、うん!行こう!」

 いち早くタントとホークが駆け出し、その後ろからジャックを囲むようにして他のメンバーがついていく。
 木々の間を縫うようにして駆け抜け、草叢を踏み越える。

 叫び声の発生源は、一人の少女だった。
 少女は必死の形相で走っていた。
 顔面は蒼白、玉のような汗を掻き息を弾ませて走る少女。
 先頭を走っていたホークはすぐにその原因を見つけ出した。

「――グリズリー……!
 やっぱりこの山に住んでいたか――」

 少女の後ろに灰色の巨体。
 それは一匹の羆――グリズリーだった。
 グリズリーはその体を撓らせながら少女を追う。
 それは縄張りを荒らされたことに対する報復か、餌を求める欲望か。
 普段の大人しい、森の守護者としての姿はそこにはなかった。

 それはまさしく、猛獣だった。

 当然ながら、獣は人よりも迅い。
 相手が獲物であり、少女であるならばなおさらだ。
 灰色の毛皮のその巨体は、今にも少女に襲い掛かりそうだった。

「――ッ……おりゃあああ!!!」

 クラリスが道端の石をグリズリー目がけて投げ放つ。
 それは的を過てることなく、襲撃者の鼻先へクリーン・ヒットした。

 石を投げられたグリズリーは一瞬怯んだ。
 だが小石一つでその巨体が倒されるわけもない。
 グリズリーは首をブルリと震わせ、クラリスの方を睨めつける。
 そして方向転換してクラリスの方へ突進してきた。

「やばっ……!失敗だった――!?」

「――いや、今ので正解だッ!!」

 クラリスの方へ気を取られていたグリズリーの横っ面へ、タントが強烈な前蹴りを食らわせる。
 気を向けていな方向からの攻撃に、今度こそグリスリーはその巨体を地面に転がせる。

「――っと、そこの君、大丈夫?」

 その隙にホークが襲われていた少女を抱きかかえグリズリーの下から脱却する。

「ぅ……うぅ……」

 少女は恐怖と疲労で体を強張らせていたが、見たところ怪我はなかった。

「みなさん、奴が来ます!」

 少女の救出に胸を撫で下ろしたのもつかの間、ジャックがグリズリーを指さす。

 タントの蹴りを食らって倒れていたグリズリーだったが、その体をゆっくりともたげて『烈火と成る者たち』を睥睨する。
 二度の不意打ちに誇りを傷つけられた山の王。
 その口がおもむろに開かれ――

「グォオオオオオオオオオオオオ!!」

 憤怒の咆哮が打ち上げられた。

「なんかすごいお怒りのようッスよ!
 ていうか心なしか膨らんでるッス?」

「野生動物は相手を威嚇するときに毛を立たせて体を大きく見せる習性が……。
 ってそんなことはどうでもいいです!
 どうするつもりなんですか!」

「……足の勝負になったら勝てないわ!ここで戦うしかない!
 その子は私に任せて!
 ユーフェちゃんはジャックさんを安全な所へ!
 プリムラちゃんは回り込んで弓で支援して!」

 クラリスは右手に魔術の発動媒体たる手袋を嵌めた。
 そして左手で少女を庇いながら、ジャックとユーフェを守るように立つ。

「――で、俺らは真っ向から相手すりゃいいわけだな!
 シルバ、ホーク!三人で撹乱しながら攻撃だ!」

 タントは剣を抜き放ち、切っ先を巨獣へと向ける。
 そしてホークとシルバに顎で指示を出す。
 グリズリーを取り囲み標的を絞らせない作戦だ。

「了解だ。
 爪や牙より、あの巨体での突進の方が危険だ。
 絶対真正面に立つんじゃないぞ」

「こっちも了解!
 じゃあ――、行くよッ!!」

 タントの指示を受けホークとシルバはそれぞれの得物を構えながら素早く移動した。

 ジャックは驚いていた。
 『烈火と成る者たち』はまだ駆け出しの冒険者たちで、結成したてのパーティと聞いていたからだ。

 実際、昼間の様子を見ている限りは仲の良い友人グループのように見えていた。
 ジャックはむしろそこに親しみやすさすら感じていた。
 しかし今のやりとりはまるで熟練の傭兵団のようだった。

 ――鳥肌が立つ。
 この自分と年の近い若者たちが、まるで小説の中のヒーローのように見えた。

「ゴォオオオオオオオオオオオオオ!!」

 グリズリーは咆哮を上げながら突進を繰り出す。
 標的は一番体の小さいホークだ。
 あの相手ならば一撃で仕留められる、グリズリーの野生がそう判断を下したのだ。

 しかしその判断は誤りだ。
 獣が狙った少年は最も身軽な戦士だ。
 ホークはグリズリーの突進をすれすれで避け、その前足に槍を絡ませグリズリーを転倒させる。
 グリズリーは転んだ体勢のままホークへ向けて逆の腕の爪を振るうが、すでにホークは距離を置いていた。

「グッ!!?」

 追撃のために体を起こしたグリズリーの背中へ、今度はタントが剣を叩きつける。

 毛深いグリズリー相手では剣の刃筋が立たず斬りつけることができない。
 そこでタントは剣の重みを十分に生かすように、「斬る」のではなく「叩く」ように使った。

 結果としてそれは有効だった。
 背中を強打されたグリズリーは息が詰まり呼吸ができなくなっていた。

「……フッ!」

 動きを止めたグリズリーは銀の弾丸のいい的だった。
 銀の弾丸――シルバは腰から引き抜いた短剣でグリズリーの左眼を穿つ。

「ギャオォオオオオオゥ!!?」

 怒りの咆哮が絶叫へと変わる。
 視界を半分奪われたグリズリーは敵の姿を見失う。

 傷の痛みに加え、視界が無いという恐怖。
 並みの野生動物相手ならばすでに決着がついていただろう。

 だが痛みも恐怖も、山の主たるグリズリーの心を折るには届かない。

 グリズリーはいつだって狩る者だ。
 一方的な蹂躙者で、彼を獲物とする動物は山の中には存在しない。
 食物連鎖の頂点、その矜持がグリズリーの体を動かす。
 敵を見失い混乱したまま、グリズリーは四肢をめったやたらに振り回した。

「……っと、危ない!
 これじゃあ近寄れないよ!」

 遠間から突きを繰り出そうとしたホークがグリズリーから離れる。
 その服には爪の跡。
 グリズリーの攻撃が前衛の戦士たちの体を掠める。

「――じゃあ、近寄らなければいいッスよね?」

 プリムラの声。
 それはタントたちの真上から聞こえていた。

 ――ヒュガガガッ!!

 続けざまに三矢、グリズリーへ矢の雨が突き刺さる。

「プリムラちゃん!?」

 矢の出所をクラリスが目で追う。
 プリムラがいたのは木の上だった。
 枝に足を絡ませ、器用に射撃の構えをとっていた。

「へへっ、作戦成功ッス!」

 真上から真下に向かって放たれた矢は、重力により加速がつき威力を増している。
 そんな強力な矢が三本、脳天・喉元・胸部という生物に共通の急所へ突き刺さっていた。

「グフゥ……ゴッ……ッ」

 いかに巨体を誇るグリズリーであろうと、ひとたまりもなかった。
 グリズリーは断末魔の声を上げることもなく倒れ伏してその眼光を失った。

「なんて人たちだ……。
 グリズリー相手に一歩も引かないなんて」

 ジャックが感動の声を上げる。
 初めて見た戦闘に興奮気味のようだった。

「さっきの子供、様子はどうだ?」

 短剣をベルトに納めながらシルバが助けた少女を見る。
 襲われていたときは体を震わせていた少女だったが落ち着いてきたようだった。

「た、助けていただき、ありがとう、ございました……」

 たどたどしくも丁寧に少女は『烈火と成る者たち』に頭を下げた。

 話を聞けば少女はライオネル村の娘だった。
 なんでも山で落としたブローチを探していたらしい。
 母親の形見であるそれがどうしても見つからず、夢中になって探して気づいたらグリズリーの巣穴に近づいてしまったということだった。

「でも、もうこんなことしちゃダメよ?
 グリズリーが出る山に子供が一人で入るなんて」

「ご、ごめんなさい……!」

 再び少女が頭を下げる。

「クラリスさんの言う通りです」

 ジャックはしゃがみ込み、少女と顔の高さを合わせた。
 そしてそっとその肩に手を置き、目を合わせながら話しかける。

「命は、たった一つです。
 いくら大事なものを失くしたからといって、天秤に乗せていいものではありません。
 亡くなったお母様も、貴女が無茶をしたと知ったらきっと悲しみます」

 そういいながらポケットから何かを取り出すジャック。
 少女の前で開いたその掌に乗っていたのはジャックが山登りの途中で見つけたブローチだった。

「それは……!」

「やっぱり、落とし物とはこれのことでしたか。
 ここへ来る途中に見つけたんです。

 はい、どうぞ。
 もう落としてはいけませんよ?」

「はい……!」

 ジャックの真摯な語りかけに、少女は力強く頷いた。

「――よしっ。
 依頼も達成したし人助けもしたし、そろそろ村へ帰る?」

「ええ、そうですね。
 日が暮れる前に村に――」

 その時、クラリスの頬にポツリと何かが触れた。

「あ――、雨……」

 すぐに雨は勢いを増していき、あっという間に辺りは雨音で包まれた。

「ったく、ようやく止んだと思ったのにまた雨かよ?」

「山の雨は変わりやすいというからな。
 早く山を下り……――ジャック?」

 依頼人の異変に真っ先に気づいたのはシルバだった。

「あ、ああ……!」

 見ればジャックは真っ青な顔をしていた。
 視線の先にあったのは雨で濡れた地面。

「え、絵が……!!
 絵を置いてきたままです!
 取りに行かなくては……!!」

 そう言い残し、ジャックは絵の場所へと走り出した。

「ちょ、ちょっと待って!ジャック!
 まだ近くに危ない動物がいるかもしれないから――って。

 ……もうっ、あの人絵のことになると本当に周りが見えなくなるね!
 シルバ、その子お願い!先に行って村まで送り届けて!」

 ホークがすぐにジャックの後を追う。
 シルバと少女を残し、他のメンバーもその後を追いかける。

 ジャックはすぐに見つかった。
 弾かれたように走り出した彼だったが、ホークが追いついたときには木によりかかって息を切らしていた。

「ハァ……ッ、ハァ……ッハァ……ウッ、ゲホッ!ゲホッ!」

「大丈夫ですか、ジャックさん。
 なんだか苦しそう……」

 クラリスがジャックの背中をさする。

「大丈夫……ちょっと、病気を、ゲフッ……!
 病気を患ってて……。
 それが再発したようで……すぐに治まッ……!」

 ジャックの様子は大丈夫そうには見えなかった。
 顔は蒼白で、息切れも激しい。
 そもそもあれほど絵に執着していた彼が、絵を雨ざらしにしたまま足を止めているという時点で事態の深刻さが感じられた。

「ガハッ!!」

「ジャックさん!!?」

 大きくせき込むジャック。
 口を抑えていた手は真紅に染まっていた。

 ――喀血していた。

「ゲフッ、ゲフゲフッ……!!」 

「血、血ィ!!?
 や、やばいッスよこのままじゃ!
 ユーフェさんどうにか治せないッス!?」

「……聖北の術が有効なのは怪我や外部から入ってきた毒に対してのみです。
 元からある病気を治すなんて、それこそ聖人クラスの奇跡使いじゃなければ……」

「とにかくここはまずい。
 雨のせいで体が冷え切ってやがる。
 早く村へ連れて行くぜ」

 タントがジャックの体を背負う。
 すでにジャックは気を失っていた。

「――ど、どうしたんだい!
 そのぐったりしているのは……ジャックかい!?」

 ジャックを抱えた一行は山を登ったときの倍の速度で山を下って行った。
 そしてすぐさま『雪上の轍亭』へ駆け込んだ。
 ジャックの姿を見た女将は驚きの声を上げた。

「話は後だ!寝床を用意してくれ!
 あとは毛布と……体を温めるもんだ!!」

 女将はすぐにただ事じゃないことを理解した。
 宿の部屋にジャックを寝かしありったけの毛布とお湯で体を温めた。
 『烈火と成る者たち』もできる限りそれを手伝った。

 そして、一晩が明けた。

「……ジャックの様子はどうだ?」

 部屋にやってきたシルバがユーフェに尋ねた。
 『烈火と成る者たち』は交代で一晩中ジャックの看病をしていたのだった。

「芳しくないですね……。何しろ原因が不明です。
 熱による意識の混濁、呼吸困難と喀血、いずれも重症です」

 ジャックは丸一日たっても目を覚まさなかった。
 時折魘されるように荒い息を吐くだけだった。

 ユーフェがジャックの口元を布で拭う。
 その布には唾液交じりの鮮血が混ざっていた。
 余りの痛々しさにシルバはそっと目を逸らす。

 と、宿の中がにわかに騒がしくなった。

「……誰か来たようだ」

 シルバが部屋の外へ意識を向ける。
 どうやら騒ぎの中心はジャックの寝ている部屋へ近づいてきているようだった。

 そしてノックもなく扉が乱暴に開け放たれる。
 現れたのは一人の男だった。

「こ、これは……!」

 男は眠るジャックの顔を見て、ジャックに負けないほどに顔を青ざめさせた。

「何者だ、お前は。ここは見てのとおり病人の部屋だ。退室願おうか」

 シルバが侵入者を睨めつける。
 その眼光の鋭さに男は一瞬怯んだ。

「あの、貴方たちこそ何者ですか……?
 私は坊ちゃん――ジャック・サーシウス様を迎えに来たサーシウス家に仕えるものです」

 男はジャックの関係者だった。
 ジーゲイルと名乗った男はジャックの実家であるサーシウス家の執事だった。
 サーシウス家はかなりの資産家でジャックはその当主の息子だという話だった。

(身なりがいいとは思っていたが、まさか本当にお坊ちゃまだったとはな)

 ジーゲイルの話によればジャックはもう長い間病に侵されていたらしい。
 思えば初めて会った時から体調が悪そうにしていたことをシルバは思い出した。

 シルバはすぐに『烈火と成る者たち』に召集をかけた。
 そしてジーゲイル、『烈火と成る者たち』、女将の間で話し合いが行われた。

 村には医者がいたがジーゲイルの話ではジャックの病はかなりの奇病で、専門家でなければ処置も難しいということだった。
 下手に動かすのは危険、されどただ寝かせていてもいたずらに時間を浪費するだけだ。

 最終的にジャックをお抱えの医師がいるというサーシウス家へ運ぶことになった。

「すぐに移送の準備を始めましょ」

 クラリスの指揮の下、ジャックをサーシウス家へ移送する準備が進められた。

 ぐったりとしたジャックを馬車の荷台へ寝かせる。
 毛布を何枚も重ね、少しでも体に負担がかからないようにした。

「それではみなさん、ジャック様がお世話になりました。
 このお礼は後日必ず……」

「まずはジャックさんの体調ッス。

 ――あ、これ。ジャックさんの絵ッス。
 雨ざらしだったからぐちゃぐちゃッスけど、ジャックさんすごく絵が好きだったから……」

「何から何まで、ありがとうございます。
 では……」

 ジャックを乗せた馬車が出発しようとする。

「――待って!!」

 そこに待ったがかかった。
 現れたのはグリズリーに襲われていた少女だった。

「これ、ジャックのお兄ちゃんに……。
 ブローチを見つけてくれたお礼」

 少女がジーゲイルに小さな何かを手渡した。
 それは紐が編み込まれて作られた小さなお守りだった。

「病気を治す、お守り。お母さんが作ってくれたの。
 ジャックのお兄ちゃんがお母さんのブローチを見つけてくれたから、きっとお母さんがジャックのお兄ちゃんのことを守ってくれると思うの」

「確かに。
 ジャック様がお目覚めになられたらお渡しします」

 改めて、馬車が出発する。

 『烈火と成る者たち』と少女の七人は馬車が見えなくなるまでその場で見送った。





 ジャックを送り出した一行はそのままライトネル村を旅立つことにした。
 予定よりも長い逗留だったが後ろ髪を引かれるような思いの旅立ちだった。

 リューンまでの道中は順調に進んだ。
 そして二日後、『紳士の祝杯亭』。

「ようやく帰ってきたなお前たち。
 随分長かったな」

 『紳士の祝杯亭』では親父が一行を迎え入れた。
 予定の遅れが天候によるものだと親父も予想してはいたが、それでも実際に顔を見るまでは安心できなかったのだろう。
 カウンターの奥には厳ついながらも安堵の表情を浮かべた顔があった。

「ええ、まあ、いろいろありまして。
 荷物を片付けたらお話ししますよ。
 ……おなかが減ったので、できれば何か食べるものがあると嬉しいです」

「賛成ッスー。
 わたしもおなかペコペコッスー……」

 『烈火と成る者たち』は久しぶりの親父の料理を食べることになった。
 宿に着いた時間が遅かったためか、一行を除いては他に食事をしている者の姿はなかった。

 食事をしながら、ホークが荷物運びの依頼から始まった紆余曲折を親父に話して聞かせた。
 ライトネル村についてや、ある絵描きとの出会いについて。
 親父は黙って話を聞いていた。

「ねえ親父さん、ジャックはさ、自分の病気のことを知ってたのに僕たちに依頼をしてきたみたいなんだ。
 もし僕らが病気のことを知ってて、ジャックが山に入るのを止めていたら……。
 今でもジャックは元気にしてたかなぁ?」

 ホークが親父に問いかける。

 それは他のメンバーも少なからず思っていたことだった。
 自分たちが依頼を受けてしまったことが、彼の体調の悪化につながったのではないだろうか。

 黙って話を聞いていた親父がゆっくりと口を開いた。

「そんなことはワシには分からん。
 ワシはそのジャックとかいう絵描きに会ったことはないからな。

 だがそのことに対してお前たちが責任を感じる必要はないぞ?
 どんなに優秀な冒険者だって、すべてのことを予想できるわけではないしな」

 親父は水瓶から水を汲み上げ、水差しへと注いだ。

「……命を懸けてまで果たそうとしたことに水を差すのは、半端な覚悟で許されることではない。
 お前たちが……冒険者ができるのは、依頼人の手助けまでだ。
 道を選ぶのはあくまでも依頼人自身なのだからな」

 親父の言葉は重々しく、それでいて『烈火と成る者たち』の心にすっと入っていった。
 それはきっと多くの冒険者を見てきた親父の言葉だったからだろう。

「そうかな……そう、だね」

「ま、今はジャックの無事を祈ろぜ。
 あいつのことだ、絵が未完成なまま逝っちまうなんてことはねえよ」

 それはそうかもしれない、とジャックを知る面々はタントの言葉に納得したのだった。





 『烈火と成る者たち』の帰還からさらに数日後、『紳士の祝杯亭』に一通の手紙が届くことになる。
 そこにはある絵描きのその後について書かれていた。
 タントたちの目にそれが触れるのは、もう少し先の話だった。





【あとがき】
 周摩さんの作品「感情の芸術家」をお借りしました。
 リプレイで有名な周摩さんの作品だけあって、読みやすいテキストとテンポの良い展開が印象的なシナリオでした。
 メタ的な話だと、傷薬と葡萄酒をタダでもらえるので序盤のプレイにはもってこいという←

 マルチエンディングなのですが、ジャックがあのあとどうなったのかはぜひシナリオをプレイして確認してみてください。
 ……と、言ってみましたが現在は公開されてらっしゃらないようで。
 それにもかかわらずGOサインを出してくださった周摩さんありがとうございました。

今回の入手品→
報酬600sp+150sp
アイテム【傷薬】
アイテム【葡萄酒】

 ・・・・・・・・・銀貨袋の中身 【1850sp】

LEVEL UP!!
 タント・クラリス・ホーク・ユーフェ・シルバ・プリムラ→2

著作権情報…
 「感情の芸術家」→周摩様「感情の芸術家」より。著作権は周摩様にあります。
  1. [ edit ]
  2. リプレイ
  3. / トラックバック:0
  4. / コメント:0

「万鐘の都オイコート(LE)」公開

 テストプレイへの参加ありがとうございました!
 カードワースNEXT用街シナリオ「万鐘の都オイコート」の正式版が公開されました。一応更新の可能性も考えてLimited Edition(LE)と銘打っています。更新の予定は未定だ!←

 DLはアップローダーの方からお願いします。また、誤字・ミス・ご意見ご感想は正式版でも随時受け付けております。(たぶんまだミスありそう…)
  1. [ edit ]
  2. シナリオ
  3. / トラックバック:0
  4. / コメント:0

万鐘の都オイコートのテストプレイ

 NEXT用街シナリオ「万鐘の都オイコート」のテストプレイのお願いです。お時間の取れる方はぜひ協力していただければ幸いです。

 見ていただきたい部分は「スキル・アイテムのバランス」「誤字・脱字」「その他もろもろ」です。また「店員がいたほうがいいか」「もっと使いやすくできる」などのご意見もいただければとても助かります。完成版はブログとツイッターでのみの公開となる予定です(いまのところは)。

 ダウンロードはこちらからお願いします。

・更新履歴
  ・(2016/07/16)テスト版公開
  ・(2016/07/18)スキルのバランスを大幅修正しました。値札を追加しました。誤字・ミス修正しました。
  1. [ edit ]
  2. シナリオ
  3. / トラックバック:0
  4. / コメント:2

忙しい人のための「簡易キャラ紹介」

 キャラクターの簡易紹介です。パーティ結成編を読むのがめんどくさい人、内容を忘れてしまった人向けです。基本的にネタバレですので(大したものでもないですが)ご注意ください。

t.png
名前:タント・アッカルド
年齢:17歳
性格:自由
特技:剣技、過酷な環境での睡眠
出身:アッカルド島
目的:人探し兼修行

c.png
名前:クラリス・クレイン
年齢:17歳
性格:お人好し
特技:魔術(得意系統は解析)、強肩
出身:エト村
目的:賢者の塔へ入るための実績作り

h.png
名前:ホーク
年齢:14歳
性格:自信家
特技:槍術、短距離
出身:リューン
目的:なし

e.png
名前:ユーフェ・リベルト
年齢:12歳
性格:怠惰
特技:聖北の秘蹟、雑学
出身:ロスウェル
目的:毎日を怠惰に過ごすこと、教会への帰還

s.png
名前:シルバ
年齢:22歳
性格:冷静
特技:鍵開け、暗殺術
出身:オイコート
目的:盗賊ギルドの任務

p.png
名前:プリムラ
年齢:年齢不詳
性格:陽気
特技:弓術、うざ絡み
出身:不明
目的:生活のため、宿の亭主への恩返し
  1. [ edit ]
  2. リプレイ
  3. / トラックバック:0
  4. / コメント:0


NEW ENTRY  | BLOG TOP |  OLD ENTRY>>

プロフィール

River

Author:River
FC2ブログへようこそ!

« 2017 06  »
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QRコード


.

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。