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リューン枯れ葉通り(前編)

 日の光が一面の海を照らす。
 見事なまでの秋晴れだった。

 心地の良い潮風が、少女の黒髪の一房を浚っていく。
 少女は頬を撫でる髪をくすぐったそうに抑えた。

 そこは大海原を進む一隻の帆船の上。
 黒髪の少女はその甲板に一人で立っていた。

 美しい少女だった。

 長く艶やかな黒髪。
 均整のとれたプロポーション。
 シンプルなデザインのワンピースは、その飾り気のなさが却って彼女の纏う神秘性を高めていた。

 その姿はまるで船乗りたちを見守る海の女神のようだった。

 潮の香りを楽しむように深呼吸をする黒髪の少女。
 やがて瞼を閉じ、ゆっくり口を開き――、

「ありったーけーのー! ドリィィムをー! かき集めーてぇえぇー!」

 大声で謎の歌を歌い始めた。

 歪む音程に跳ね散らかる音律。
 それはもう、少女の美しさをぶち壊しにして余りある音痴さだった。

「なんですかその妙な歌は……」

 気持ちよさそうに歌う少女の後ろから声。
 黒髪の少女――プリムラは歌を聞かれていたことを恥ずかしがるそぶりも見せずにくるりと振り返った。

「おや、ユーフェさんじゃないッスか!
 船酔いはもう治ったッスか?」

 そこにはプリムラよりも頭一つ分小さい少女が呆れ顔で立っていた。
 ユーフェ・リベルト、プリムラの仲間の一人だ。

「もう船旅も六日目ですから、流石に慣れましたよ。
 ……まあその、初日こそ、このまま故郷から遠く離れた海の上で死んでしまうんじゃないかとも思いましたが」

 ユーフェは眼鏡を外してレンズを拭きながら答えた。
 彼女は船に乗った初日のことを思い出す。

 ユーフェの出身は森に囲まれた深緑都市ロスウェルだ。
 彼女にとって、船旅はもちろん、海を見ること自体も初めての体験だった。
 そのため始めはひどい船酔いで寝込んでいたのだった。

「で、こんなところで何をやってるんですかプリムラさん。
 そろそろ目的地に着くから荷物を纏めて欲しい、とクラリスさんから言われてきたんですが」

 一人妙な歌を歌っていたプリムラに疑問を投げかけるユーフェ。
 しかしパーティ結成から早ひと月。
 ユーフェもある程度はプリムラの奇行を見慣れていた。

「冒険の予感に胸を震わせてたッス!
 何せ『烈火と成る者たち』結成して以来最大の大冒険ッスからね!」

「冒険の予感、ですか。
 ……まあ、【未知の島の探検依頼】というのは確かに冒険者らしい冒険だと思いますが。
 妖魔退治やら下水道掃除よりはやりがいもありそうですし」

 今回『烈火と成る者たち』が受けたのは『新しく発見された島の探索』の依頼だった。

 依頼主はとある貴族。
 ジャンピニ・アビシニャン・リュリと名乗る彼は「白鷲連盟」という社交クラブの代表である。
 そしてリューンでも有数の知識人の一人でもあった。

 今回の島の発見も彼の功績だという。
 なんでも、彼は既存の海図を複数組み合わせて矛盾をはじき出し未発見の島を発見したという。

(――まあ、優秀ではあっても奇人変人の類でしたが)

 ユーフェは依頼人との邂逅を思い返す。

 依頼人リュリはとある社交クラブの主催者だった。

 名を「白鷲同盟」。
 社交クラブと言えば聞こえはいいが、実際は暇を持て余した貴族たちの遊び場であった。
 入場には仮面の着用が義務付けられており、『烈火と成る者たち』の一行もそれぞれ仮面を用意する羽目になったのだった。

 他にも謎の扉を(クラリスの解析によれば魔法の品らしい)設置してくるよう頼んだり、『烈火と成る者たち』に「私は一生リュリ家の下僕として仕えます」と書かれた宣誓書にサインをさせようとしたりと、掴みどころのない人物だった。

 そんな彼の依頼を受け、陸路で八日、加えて船(依頼人の持ち物らしい。どうやら資産も大した物のようで、かなり大きな帆船だった)で海路で六日をかけ『烈火と成る者たち』はここまで辿り着いたのだった。

「ところでタントさんは?
 船内にいなかったのでてっきり甲板だと思ったのですが」

「ああ、タントさんなら上ッスよ」

「上……?」

 ユーフェが上を見上げる。
 視線の先に、少年が一人。
 赤い髪を潮風に靡かせ、タント・アッカルドは船の頂点であるマストの上の物見台に立っていた。

「ちょっと、何してんですかタントさん!」

 マストの上は船で最も揺れの大きい場所である。
 時には熟練の船乗りたちですら事故を起こすこともある危険な場所だ。
 当然、素人が登っていい場所ではない。

「おーう、ユーフェ。
 ちったあ体調も良くなったか?」

 ユーフェの心配をよそに、タントは呑気に返事をした。
 マストから伸びる静索を伝いスルスルと降りてくる自由人。
 よっ、と掛け声をひとつあげてプリムラとユーフェの間に着地した。

「危ないですよタントさん。
 甲板っていうのは木製ではありますが見た目以上にかなり硬いんですから。
 あの高さから落ちたら……」

「大丈夫だっての、船乗りの連中には見つかってねえからな。
 船の上ってのはどうしたって運動不足になりがちだからな。
 たまにはこうやって体を動かしてねえといざってときに使いもんにならなくなっちまう」

「……そういう話をしてるわけじゃないんですが」

 少女は自分より四、五才は年上のはずの少年の言い分に溜息をつく。
 しかしここで食い下がったところでタントが聞き入れるはずもない、と学習するほどには、ユーフェも彼の人となりを理解してきていた。

「クラリスさんから連絡です。
 そろそろ島に着くと」

「ああ、そうみてえだな。
 上からも見えてたぜ。
 周りの島と比べてみるに、思ったよりも小さい島みてえだな」

 プリムラが船首の方へ駆ける。
 件の島は船の正面にあった。

「あれッスね!」

 プリムラが指さす方へユーフェも視線を向けてみた。

「なるほど、あの程度の大きさの島ならば確かに今まで見逃されていたのも頷けますね。
 探索もひょっとしたら一日あれば十分かもしれません」

「ええー、じゃあ心躍る大冒険とかキラキラの宝の山とか強敵との熱いバトルとかはなしッスかー?」

「強敵ってなんですか強敵って」

 肩を落とすプリムラを見てユーフェは呆れ顔だった。
 しかしユーフェもリューンから二週間近くかけてここまで来て、仕事が一日で済んでしまうというのは拍子抜けだった。

 そんな二人の様子を横目に、タントは目標の島を見つめる。

(新発見の未開の島、ねえ……。
 剣を振り回すような依頼じゃねえ、と思っていたんだけどな。
 どうにも危険な予感がしやがる)

 それは戦いの前の高揚感に似ていた。
 タントは荒事を待ち望んでいる自分に気づき、自らを戒めるように頭を掻いた。




 『烈火と成る者たち』は森の中を進んでいた。

 一言でいうなら、そこはまさに原始の森だった。

 大人二人が抱えられるほどの太さの幹が乱立している。
 その幹もびっしりと蔓で覆われ、長い年月をかけはぐくまれてきたことを感じさせた。
 緑の匂いはむせ返るくらい濃密で、地面は朽ちた枯れ葉が水を吸いじっとりとしていた。

 島はその大部分が森に覆われていた。
 森は人の手の入らない純の自然だったが、悪天候や危険生物の存在への危惧は杞憂に終わり、一行の探索は着々と進んでいた。

 今回の主な仕事は島の地図の作成――マッピングだ。
 地形を指標に基づいて図面化する高度な作業。
 しかし担当するクラリスは手慣れた様子で地形を書き込んでいた。

 シルバはいつものように一行の数歩前を行き索敵をする。
 プリムラはそのすぐ後ろから矢を構える。
 一見平和そうに見える森だったが、それでも長い年月人の目に触れていなかった島の森だ。
 いつ野生動物が襲い掛かってくるかわからない以上必要な行為だった。

 一方で未開の地であることは何もマイナス面だけではない。
 ホークとユーフェは島の植物の採集を行っていた。

 列島の一部であるこの島だったが、気候の違いのためか珍しい植物が少なくない。
 うまくすればリューンで換金することもできるかもしれない。
 依頼の邪魔にならない範囲でこういった副収入を見込めるものを集める、というのも冒険者でやっていくための知恵のひとつだった。

「――で、なんで俺は扉の下敷きになって山登りしてんだ」

 隊列の最後尾、タントが上目遣いでクラリスに抗議の視線を送った。
 決して媚びているわけではない。
 単純に視点が上にあったのだった。

 扉、あるいは戸板。
 一枚板で出来たごく普通の扉をタントは背に負っていた。

 依頼人から渡されたこの扉。
 見た目には分からないがどうやら魔法の品であるらしい。
 これを島の山頂に置いてくる、というのも依頼の一つだった。

「ごめんねタントくん。
 でも誰かが運ばないといけないから……」

 困ったような笑みを浮かべつつタントを見下ろすクラリス。
 タントが扉を運ぶ、というのはパーティの頭脳労働担当であるこの少女の提案だった。

「んなことは分かってるけどよ。
 俺が聞きてえのはこの人選についてなんだが?」

「タントくんは体力あるじゃない?
 それにタントくんってば、放っておいたら勝手にどっかいっちゃうもの。
 それくらいの重石があった方がいいかなーなんて……」

「まあ、そりゃあ一理ある」

「認めちゃったッス……!?」

 重石、という余りにも明け透けなクラリスの物言いに、簡単に頷くタント。
 プリムラもびっくりな開き直りだった。

 山登りをする以上、扉を運ぶための男手を要するのは必然であった。
 シルバには周囲の警戒という彼にしかできない仕事があり、ホークはもともと自らの得物である短槍を背負っていた。
 そういうわけで、クラリスはタントに扉を背負って登山するように頼んだのだった。

 ――そして結果的に彼女の人選は正解だったといえる。

 地図が半分ほど埋まり探索も折り返しに来て、ずっと中腰のまま扉を背負ってきたはずのタントは息ひとつ乱していない。
 体が資本である剣士という役割を鑑みても、タントの底なしのスタミナは驚異的だった。

「ここまで何も言わず運んできといて、今更ぼやかないでよタントー。
 確か、一番高いところに置けばいいんだよね、その扉。
 どうシルバ、そろそろ頂上っぽい気がするけど?」

 見かねたホークが先行するシルバに尋ねる。

「そう、だな。地図を見ていいか?
 ……どうやら正面に見えるあの丘を超えれば頂上のようだな」

「あれだな?
 っし、いっちょダッシュで――」

「こらこらー、言ってる傍からもう……。
 はぐれちゃダメよ?」

 気持ちの逸るタントをなだめつつ一行は大木の合間縫うように道ならぬ山道を登っていく。
 木々の間から覗く空にはいつもより眩さを増したような真っ白な雲が漂っていた。

 やがて急だった勾配は緩やかになっていく。
 木々もまばらになりだんだんと視界が開ける。
 どうやら一行は島の頂上へと到着したようだった。

「おつかれさまです、タントさん。
 どうやらここが頂上のようですよ」

 ユーフェが地図を眺めながらタントへ伝えた。

「ふう、やっとこいつと離れられるぜ……」

 よっこいせ――、とタントが背負っていた魔法の扉を地面に下した。

「で、こいつはどこに置いておきゃいいんだ?」

「その辺の木に立てかけておけばいいんじゃない?
 魔法の品って言ったって、ここには盗む人もいないだろうし」

 そう言ってホークは扉を受け取ると木の合間に扉を立てかけた。

「反対側は谷になっているようだな。
 向こうにも丘が見えるが……随分霧がひどいな」

「霧ッスか?」

 プリムラが登ってきた方向の反対を覗いてみると、シルバの言う通り急峻な崖になっており、その先には濃密な霧が立ち込めていた。

「木々がひしめき合っているから空気の水分が多いのね。
 ミルクみたいに濃い霧ね、谷の向こうが見えないわ」

 クラリスが霧の奥へと目を凝らす。

「……ううん、だめね。頂上からなら地形が確認できるかもって思ったんだけど。
 この分だとあっち側も実際行ってみて確認しないといけないわね」

「なあに、扉さえなけりゃあこっちのもんよ。
 ガンガン歩いて、日没までには船に戻ろうぜ。

 ……って、ちょっと待て。なんだありゃ?」

 タントの顔色がにわかに変わる。
 目を細めて、谷の向こう側、霧の立ち込める先を見据える。

「どうしました、タントさん?」

 珍しく真面目な顔になるタント。
 どうやら何かに気づいたらしい。
 観察力や注意力は盗賊であるシルバに劣るものの、タントの動物的な勘の鋭さはパーティ内一であることをユーフェは知っていた。

「シルバ、分かるか?」

 じっと前方を見つめたままタントがシルバに問う。
 視線は濃密な霧の奥へと注がれていた。

「……っ、見逃していたな。
 確かに対岸に、何かあるな」

 他のメンバーもタントの視線を追う。

「なんだか……チカチカ?
 光を反射してるのかな」

「何ッスかね、あれ。
 この距離から見えるってことはかなり大きいものみたいッスー。
 霧も深いし、ここからじゃ行けなそうッスけど……」

 霧の奥。
 全貌こそ見えないものの、谷の対岸に不自然な光の反射が見受けられた。

 しかしその一部を捉えた次の瞬間には流れる霧が認識を覆い隠す。
 まるでその奥にあるものを意図的に隠しているかのようだった。





 霧の先に何が隠されているのか。
 その答えが気になりつつも、『烈火と成る者たち』は探索を優先することにした。

 いったん山を降り、今度は反対側へと回り込む。
 そうして島の周辺を取りこぼしのないように進んでいった。

 最初の見立て通りあまり大きな島ではないようで、数刻の間に島の大体を地図に納めることができた。
 しかし霧に包まれた谷、その先へ至る道だけは見つけることができないでいた。

 島を隈なく歩きつくし、谷を除けば最後の場所。
 そこは山の麓の、地図上ではちょうど島の中央部に位置する場所だった。

 背の高い木々が重なり合いまるで洞窟の中のように薄暗い。
 そしてその木々の洞窟を抜けた先に、それはあった。

 それすなわち、巨大な顔面岩である。

 正確には表面の凹凸が顔のように見える岩だ。
 巨岩の周辺には木々が少なく、開けた空間の中央にまるで王様のように鎮座していた。

 『烈火と成る者たち』は石の周囲を取り囲むように観察した。

「なんだか人が作った石像みたいに見えるわね。
 この石の周りだけ空気が違うというか、森の雰囲気に似つかわしくないっていうか……。
 長い時間、風雨に磨かれてこうなったのかしら?」

 クラリスが岩の顔を眺める。

「人は無意識のうちに壁のシミや雲の形なんかの内に人間の顔を求める、という話を聞いたことがあります。
 クラリスさんの言うように、これもきっと偶然の産物なんでしょうね」

「――いや、違う。
 おそらくこれは……」

 ユーフェの解釈に『烈火と成る者たち』の盗賊が待ったを掛けた。

 岩の後ろに回っていたシルバ。
 シルバは地面に片膝をついて岩の下部を観察していた。

「みんな、岩から離れていてくれ」

 シルバは立ち上がると岩の端に手を掛け力を込めた。
 すると巨大に見えた岩はいとも簡単に動き始めた。

 ――否、巨岩はその底部を基点に回転し始めたのだ。 

「これは……」

 ユーフェが目を見張る。
 岩は半回転でその動きを止めた。
 顔のように見えた岩の裏に、ひび割れはおろか歪みひとつないほど綺麗な鏡面が現れた。

「鏡、のような……いや、これは鏡そのものですね。
 これは流石に自然にできたものとは思えませんね……。

 でもこの島は発見されたばかりで、誰も足を踏み入れたことがないと依頼人が言っていませんでしたか?」

「見ろ、台座に回転する仕掛けがされている。
 この岩、いや石像か。これが人工物であることは疑いようがない。
 ……依頼人の言を信じるのならば、遺跡の一部かもしれないな」

「まじッスか!?これはいよいよ大冒険の匂いがしてきたッスね……!
 でもこれ、何の意味があるッスかね?
 この鏡だけこんなところにポツンと置いてあっても、あんまり使い道がないような」

 プリムラが首を傾げる。

「あっ、みんなちょっとこっちに来てみて!」

 少し離れていたところに立っていたクラリスが何かに気づいたように声を上げた。

「この鏡、日の光を反射してるんだけど、反射した光線がさっきの谷間に続いているわ。
 もしかして、さっきタントくんが見つけた霧の中の何かに関係してるのかも!」

 期待を胸に秘め、『烈火と成る者たち』一行は扉を設置した山の頂上へと戻ってきた。

「見ろ、麓から光が伸びている。
 先は……対岸のようだな」

「ほえー、綺麗ッスねー。
 あ、向こうからも反射してきてるッス!
 こっちに伸びてきてるみたいッスね!」

「霧の中を光が走っているようです。光の橋、ですね。
 でも、こちらとあちらが光でつながったところで、実際に通れるわけじゃないですよね?」

 光の橋はちょうど一行の足元につながっていた。

「通信手段だったのかもしれねえな。
 昔見たことがあるぜ。砦と砦の間で連絡を取る時に、砦の上で焚火を焚くんだ。
 そいつを鎖状につなげていけば、簡単な情報なら馬より早く伝えられるってな」

「初めて聞いたわ、それは面白い仕組みね。
 じゃあもしかしたらこっちにも向こうに光を送るための装置があるのかもしれないわね」

 クラリスはそう言いながら光の終着点に手を伸ばしてみた。
 それはそのくらいの明るさなのかを確かめてみようとした、何気ない行為だった。

「――えっ?」

 しかし、クラリスは突然ぎょっとした表情を浮かべてそのまま固まってしまった。
 一体何事かと、クラリスの様子を訝しむ一同。

「どしたのクラリス?
 変な顔しちゃってさ」

「わ、私の勘違いだと思うんだけど……。
 ねえ、ホークくん、ちょっとこの光に手を翳してみてくれない?」

「え?まあいいけどさ……」

 そういってホークも光へと手を伸ばす。

「!!?」

 そしてまた、ホークもぎょっとした顔をした。

「この光、触れるんだけど!?
 しかも石みたいに硬いや……!!」

 『烈火と成る者たち』はこぞってその実体化した光を確かめた。
 見た目こそ光でできたものだったが、確かにそこにはしっかりとした石の感触があった。

「――ってことは何か?
 この光の橋ってのは、本物の橋だってことか……!?」

 タントは橋の続くその先を見た。
 視線の先には真っ白な霧に包まれた対岸。
 一体そこに何が隠されているあるというのか。

「どうする……?」

 クラリスが『烈火と成る者たち』の顔色を伺う。
 果たしてこの橋を渡るべきか否か、という意味だ。

 空は雲一つない快晴。
 そして日が暮れるまではまだ十分に時間がある。
 光の橋の仕掛けについては今すぐに消えることはないと思われた。

 しかしその一方で危険を感じていた。

 第一に、この橋が罠なのではないかということ。
 中途半端に進んだところで橋が消えたりしたら、生きて戻ることはできないだろう。

 第二に、橋の先にあるものについてである。
 このような大掛かりな仕掛けを作ってまで隠していたもの。
 冒険者たちの命を脅かす危険性のあるものが隠されている可能性は十分考えられた。

「――でも、その危険を押してでも、ここは渡るべきだと私は思う。
 私たちが受けた依頼は島の探索よ。
 この先を調べないで帰ったりしたら片手落ちだもん。

 それにこの橋――、とてつもない神秘よ。
 一魔術師としてはこの技術の出所が知りたいわ」

 クラリスの翠の瞳が使命感に燃える。

「俺も渡るべきだと思うぜ。
 言ってみりゃあこいつは、この島にケンカを売られてるようなもんだぜ?
 『命が惜しくなけりゃこの謎にかかってこい』ってな」

「ま、僕らは冒険者だからね。
 危険を冒して、宝を持ち帰ってこそ冒険者でしょ。
 新発見の島に現れた謎。
 こんな美味しそうなものを食べ残して帰るなんて、親父さんに怒られちゃうよ」

 タントとホークもクラリスの意見に同意する。
 他のメンバーも同様で、反対するものはいなかった。 

 隊列の先頭を行くのはいつものごとくシルバだった。
 いつもは冷静なシルバも、儚げにに見える光の橋へと最初の一歩を踏み込んだ時は
緊張しているようだった。

 次いでホーク、クラリス、ユーフェ、プリムラが足を踏み入れた。
 ユーフェはできるだけ下を見ないようにし、クラリスの裾を力強く握っていた。

 殿を務めるのはタントである。
 他のメンバーの様子を見ていたためか、あっさりと光の上へ身を預けた。

「さあ、文字通り危ない橋を渡るってやつだ。
 この島の謎とやらを見せてもらおうじゃねえか」

後編へ続く……
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